Toa de Butogeta

〜絶対に自分探しなんてしない旅のブログ〜

パリ

ここ数日、

特にやることもなく、やる気もなく、

茹だるような暑さに、ひたすら不満を独り言ちています。

 

このままじゃいけない!と自らに喝をいれ、

明日から実家に帰って、さらに自堕落な生活に

没入していこうと思っております。

 

でも季節は気づいたら夏です。

気づいたら半裸、なんてこともざらにある季節です。

 

ふと下を見ると、ビールによってふくよかに蓄えられた

「贅沢、いや怠惰とも言うべき、不甲斐のなさと甘えを体現している肉」

略して 贅 肉 が視界にちらつきます。

痩せたいと、筋肉質になりたいと、この腹を見るたびに思います。

この腹によってもたらされた、苦渋に満ちた青春を思い出します。

ガシッと贅肉を掴んでみます。心地よい弾力に一瞬、我を忘れます。

その間も、もう片方の手でガシッと握りしめたビールジョッキは離しません。

 

斯くして今年の夏の目標は、

久しぶりに帰った実家で痩せる。という

不可能を絵に描いたようなものになりました。

 

最大の敵は、えぇじゃないかえぇじゃないか、と

小躍りしながらご飯を大量に寄越す母親です。

微塵も勝てる気がしない。

 

 

断固たる決意の表明はこの辺にして、

パリです。

 

パリとは、世界でも有数の

「街」という、何でかよくわからないけど、

お洒落な雰囲気を醸して出している漢字が似合う都市です。

僕が世界でいちばん行きたかった場所も、ここ、パリにあります。

 

 

 

ミュンヘンから夜行列車でパリに着いた時、

得も言われぬ感情になりました。

 

僕は、好きな食べ物はいちばん最後に食べるタイプです。

 

とてもとてもとても来たかったパリです。

こんなフラッと、しかもここ数年でいちばん汚らしい格好で来ていいの?

それにもっと色々調べてから来たほうが良かったんじゃない?等々。

後悔にも似たそれは、渦を巻いてやってきました。

 

駅に列車が止まり、ホームを歩き出した瞬間に、

そんなものは霧散しました。

 

あれです、いつも通り、ひゃー!パリやべー!かっけー!と

アレな感じの感想が脳内を支配しました。もちろん口は半開きです。

 

 

 

 

口を半開いたまま、地下鉄を乗り継ぎ、宿に向かいます。

ハンガリーで会った方に日本人宿の存在を教えてもらっていなかったら、

僕のパリ滞在は思い出深いものになっていたかどうか、分かりません。

 

夢の家でした。

 

 

多くの方と知り合い、仲良くなり、一緒にビール飲んで、

ついには髪まで切ってもらいました。

 

そして、モデルばりにカッコつけて写真撮影までしました。

見たい人はご一報ください。一枚120円で差し上げます。

 

 

 

僕はそこそこ長い間泊まっていました。

また、多くの方が延泊しており、暇を持て余しがちでした。

 

あらかた観光も終わった時に、ふと思い立ちました。

 

アホなことがしたい、と。

 

アホなことせな!と、ある種の使命感でした。

そしたら、ネットでアホな画像が流れてきまして、

あ、これいただき。と相成りました。

 

イデアがパクリなのは、パクりたくなるほどアホだったという理由で

目を瞑っていただきたい。

 

 

 

すべてが至極シンプルなものです。

 

目的は、チップを集めること。

しかし、誰も恥ずかしい思いはしたくない。

 

こちとら、伊達にゆとりと呼ばれているわけではありませんから

やるなら徹底して、面倒なことは避けます。

 

 

 

そして肝心のアイデアはこちらです。

 

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その名も、透明人間 といいます。

 

背後に聳え立つ凱旋門から視線を降ろすと、

赤い布の上に靴が一対、置かれています。

その横には、段ボールで出来た看板。

「homme invisible」

フランス語で透明人間という意味の言葉が書かれています。

そして、下に英語と日本語が併記されています。

看板の後ろにあるのは、脱ぎ散らかしたような衣服。

 

もうお分かりのように、

写真には映っておりませんが、あそこには

裸で、靴だけを履いた変態がいきり立っているのです。

誰も彼を視認することはできません。だって透明なんだもん。

 

世界中に流行を発信するこのシャンゼリゼ通りに、

靴だけ履いた変態がいたら、さぞや盛り上がるだろうと。

しかも、靴はスリッポンです。

スッポンポンと語呂が似ているという細かい芸当さえも

評価されること請け合いです。

 

 

すみません、嘘です。スリッポンはいま適当に考えました。

 

 

ともかく、これでチップを集めて、今宵のビール代を稼ごうという魂胆でした。

 

僕を含め4人で凱旋門に向かい、おもむろに透明人間を立たせました。

 

これをやる前、軽く20ユーロとかいくんじゃない?みたいな会話が

僕らの間で交わされました。

 

結果からお伝えします。

 

なんと!

 

90セント。

 

 

 

ユーロではありません。

補助通貨のほうです。

日本円にしたら、120円くらいです。

 

 

道行く人は、興味は持ってくれるのです。

面白がってくれる人もいます。

しかし、それと同じように 何てくだらない事を!と言うように

しかめっ面をする人の多いこと多いこと。

 

写真だけ撮っていく人もいました。

撮るんなら金払えよ!とインド人みたいなことを考えてしまいます。

 

結局、1時間で退散しました。

 

誰も恥ずかしい思いをしない、というのはすなわち

みんな見るだけ、という状況になるのです。

 

や、本当に退屈です。

1時間はよく頑張ったほうだと思います。

 

 

帰り際、4人は、

楽して稼ごうなんて甘っちょろい考えは通用しないんだね・・・

汗かいて働けってことなんだね・・・

と、世の中の厳しさを痛感し、背中から哀愁すら漂いそうでした。

 

透明人間セットをゴミ箱に押し込み、

全てを無かったことのようにして、帰りました。

 

 

でも、楽しかったです。

アホなことができただけで満足です。

 

透明人間を眺めている途中、日本人のご夫婦に

そんなにお金ないの?と真顔で心配されたり、

物乞いに靴を持っていかれそうになったり、

とても楽しい時間でした。

 

アホなことにわざわざ時間を割いて付き合ってくれた

3人の友人に感謝したいです。

 

 

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エッフェルさんです。東京タワーにしか見えませんでした。

 

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凱旋門からの眺めです。パリは曇り空のほうが似合うと思っています。

 

 

さて、次回は僕が世界でいちばん行きたかった場所について

書こうと思います。